- 2014-6-2
- ナマズ
2014年5月末
暑い。。。
気のせいだろうか、突然に季節が動いたように思えた。日が落ちてから風が吹いても以前のようなアウターは要らないし、念の為と思い羽織ったデニムシャツが暑かった。
斜めのチョコレート護岸を下り、立ち位置であるテトラへ飛び移った。大型河川特有の再処理された水の香りが鼻腔を通り抜け、そして今度は意識的に鼻呼吸で鼻腔に香りを当てた。僕はこの香りが好きで、とても臭いとは表現したくない。
◆流水系ポイントを狙え
左斜めからカーブした緩い瀬のアウトベンド側に、最初の立ち位置を選んだ。狙いは、約40m先の対岸、砂利底のシャローだ。カーブした瀬が作るインベンドのシャローは、フィーディングエリアとなっており、流れの中に多くのナマズが付いている。
水が動いているポイントを、流水系ポイントと呼ぶことにする。段になった瀬の下、堰の落ち込み付近、流れ込み、流れ出しなどがある。この流水系ポイントでアクティブなバイトやチェイスを得られたならば、シーズンインしているという目安となる。逆にオフの寒い時期は、水が動かない止水系ポイントを狙う。
◆釣れる予感?
日が落ちた曇り空に、眠らない街の明かりが反射して灰色のスクリーンを成す。そのスクリーンをバックとして無数の黒い点がランダムに飛び交っていた。僕は屈んで水を触ってみるとそれは驚く程に生温かく、経験から水温は20℃以上あると予測した。カラビナに下げた水温計を外して正確に計ってみると20℃丁度だった。
「いいねー。」
やはり、季節はこの7日間で著しく変化していた。上着は不要、コウモリの乱舞、生温かい水、シーズンインしている条件が揃った。先週まで無反応であった流水系ポイントは、今夜必ず爆発する。
◆一投目の確信
フロロの20lbにボンバダスナップを結び、ロマンメイド社のサーブ(下の写真)をセットした。Tulalaのエルホリゾンテ83を勢いよく振り抜くと、サーブが夜空に放たれた。多くのコウモリ達がサーブに向けて急旋回していく。
対岸のフィーディングエリアに大きな飛沫を上げたサーブの着水を確認すると、すぐにロッドを立ててリーリングを始めた。できるだけスローに、しかし音と波動は決して殺さずに。サーブを少しずつ下流へドリフトさせながらフィーディングエリアをじっくりと泳がせた。
「一投目で出るよね。絶対。」
そう呟くと同時にサーブの斜から不自然なモジリが見えた。
「着いた。」
ナマズだ。誰かがサーブにものすごい勢いで大きな岩を投げつけたかの様に水面が割れ、水柱が立って飛沫を上げた。
エルホリゾンテ83に重量を感じると、ラインが下流へ走った。緩めておいたドラグを少し閉め、カルカッタコンクエスト400のハンドルを回した。川底へ逃げようと下へ下へ潜り込むのをじっくりとやり取りをし、足下まで寄せた。
ランディングネットを向けると、水面直下で蠢いているそいつは、意外にも素直に頭からスルっと入ってくれた。頭がデカく腹がパンパン、傷一つないカッコ良いナマズだった。手の平、三つ分だ。
「ロクゴーくらいか?」
メーターにまでは到底及ばないアベレージサイズではあるが、流水系ポイントで獲る一本は格別だ。バイトをさせた地点と僕の立ち位置の間には川の流心があり、その流れに揉まれ、更には暴れるナマズを攻略してやった、という自己満足に存分と浸っていた。
この一本を皮切りに同じポイントで同サイズをいくつか上げた。フィーディングエリアは、掛けた魚が暴れようとも場荒れしないどころか、競争心さえも沸かせてしまう。フィッシュイーターというのはどいつも素敵だ。
ハンドルを握る前に、一服しておきたかった。久方ぶりに聞いたあの激しくテールで水面を叩きつけるナマズ特有のバイトについて、今一度ゆっくりと余韻に浸りたい。助手席に放られたバッグの中からタバコ取り出し、火を着けて燻らせる。耳の奥で水飛沫と破裂音、ドーンという重い音がループしていく。
灰皿にタバコを揉み消してアクセルを踏む。暫く走り信号待ちをしていると、ベイトロッドにジタバグを着けた青年達が楽しそうに話しながら、横断歩道を渡って川の方へ向かう。彼らは今から撃ちに行くようだ。ナマズゲームとは、身近で充実できる素晴らしいルアーフィッシングであるのだ、と思いながら眠眠打破をゴクリとやった
つづく