- 2015-7-15
- 渓流と湖の釣り/IN THE FIELD
- 渓流, イワナ, ヤマメ, 児玉崇
蒼の片鱗
蒼に立つ
この川に立つのは一年ぶりだろうか。
初めてこの川に立った時の感動は今でも鮮明に覚えている。
轟々と音をたてながら流れる蒼(あお)い流れ。
底の見えない蒼い淵。
そしてそんな蒼に同化するように溶け込む蒼い背中の魚達。
通い始めた当初は水質もまだ良好で、流れが生き、魚の質も良かった。
到底探り切れないくらい深い懐を無数に抱えるこの川は、当然の事ながら魚の型も素晴らしい。
僕の教科書はこの川だった。
しかし、そんな美しく流れていた川も様々な事情によって今では本来の川の持つ力は殆ど失われていると言っても過言ではない。
それは釣り人が一番肌で感じているという自信がある。
そんな衰退していくこの川の行く末を感じるのが悲しくて、ここ最近はめっきりと足を運ばなくなっていた。
でも、そんな中でも川が生きている区間は幾つかあって、今回はその中の一つの区間に足を運ぶことにした。
断崖の回廊
基本的に里の本流下流域でも谷が深い区間があるこの川。
それでも幾つも楽に入渓できる区間はあるが、今回入渓する本流上流域のこの区間は一度入渓するとハイペースに釣っても5時間強は退渓できない。
門限と遡行ペースを照らし合わせながらテンポよくポイントを探っていく。
入渓直後から25cm前後のイワナがコンスタントに釣れ、その中に25cm前後のヤマメがポツポツと混ざってくる感じが続く。
その途中で2度ほど尺あるかないかのヤマメをバラシ。
どちらも一瞬でバレてしまった。
それでも釣果のペースは落ちずに迎えた、個人的にこの区間一番の大場所。
大きな淵の真ん中に太い流心が走るポイント。
ベストな立ち位置からダウンクロスで流心の向こうへミノーを落とし、小刻みににアクションを加えながら流心の下へとミノーを流し込むとナイスサイズのイワナがヒットした。
約42cmの雄イワナ。
しっかりと割れた三ツ口がこのイワナの歴史を物語っている。
まだまだ大きくなりそうな大きな顔も印象的だった。
このイワナをリリースした後、おまけ的なポイントにキャストしたら想定外のサイズ(目測33~4cm)のヤマメがやる気無く底から浮いてきてバイトしたが、こちらもあっという間にフックアウト。ここでタックルのセッティングを少々変更。
そこからはヤマメのバラシも激減し、泣尺を筆頭に量型ヤマメの数釣りとなった。
( もっと早く気付くべきだった……。 )
しかしここで残念なのが携帯の電池切れ。
デジカメを忘れてしまい携帯で撮影していたのだが、その携帯もちゃんと充電しておらず、肝心な所で残念な結果となってしまった。。。
記念すべき第一回目の投稿が携帯電話での撮影となってしまったことをお詫びしたい。
しかしながら最近の携帯カメラの性能は素晴らしく、改めて携帯カメラの進歩を実感する出来事だった。
心の中で…
退渓し、結果6時間の釣行。
今回は、僅かに残っていたこの川のポテンシャルの片鱗を感じることができた釣行となった。
でも、この川の衰退は止まらないし、もはや手遅れ。
人工的な大ダメージを与えると決まった今、僕はただただこの川を見守ることしかできない。
年々蒼さを失う流れ。清流の清々しい香りとはかけ離れた臭い。汚れる底石。
渓流魚の減少を誤魔化すかのように突然増えた、鰭の無い成魚放流の魚達。
それでも、切ない気持ちを胸に僕はまたこの川に訪れてしまうだろう。
心の中で永遠に蒼が流れているから。
[ロケーション] 秋田県 7月初旬