- 2017-7-25
- 渓流と湖の釣り/IN THE FIELD
- 渓流, イワナ, ヤマメ, 木下進二朗
フカヅメ
あの頃
「人は見た目で判断してはいけません。でも、第一印象は大切です。」
矛盾に満ちた世の中のルールを耳に胼胝ができる程聞かされてきました。
僕の学生時代にはチョットルーズな格好をするのが流行りで、将来の事なんかより”女子受け”しか気にしていなかった僕は例に漏れず生活指導の常連でありました。
先生達の苦労の甲斐あって今は僕も、立派とは言えないかもしれませんが社会人と成って働いています。
ただ、あの頃言い聞かされてきた「身だしなみ」は、人前に出る事の少ない工場の現場仕事ではあまり活かされていないふうに思います。
手持ちの衣類で一番高価なものは、スーツでは無くウェーダーである事からも何となく理解いただけることでしょう。
そんな僕も、ちょっとだけ身だしなみに気を使う事が有るのです。
それは、釣行の前。
過去にバスフィッシングのチャプタートーナメントに出ていた事があるのですが、髪を切った直後の試合でたまたま良い結果が出た事があったのです。
それ以来、試合前は身だしなみに気を付ける様に成りました。
毎回髪を切る訳にもいかないので、髭を剃ってみたり、眉を整えてみたり…
中でも一番好成績を収める事が出来たのが爪を切る事でした。
最近では、そんな自身のお決まりの行動をルーティーンと呼ぶ様に成りましたね。
僕のそれはトーナメントに出なくなった今でも抜けきらず、ちょっとした遠征や気持ちの入った釣行の前は、必ずどこか一部だけでも身だしなみを整えて出掛ける様にしています。
二日間の休日
梅雨が明けるか?明けないか?
TVの中で天気予報師が頭を悩ませていました。
そんな微妙な季節の釣行です。
初日は釣友との約束をし、二日目は気の向くままに釣り歩く事としました。
夜半に降った雨の影響で川が濁り入渓までにてこずりましたが、なんとか釣りの出来そうな支流を見つけ始める事ができました。
二人で最近の近況なんかを話しながらのんびりと釣り上がります。
魚の活性も高く、お互いに釣りを楽しむ事が出来ました。
最後に濁りの引き始めた本流域で大ヤマメを狙いましたが、そんなに甘くは有りませんでした。
ただ、別れ際に「明日は良さそうですね!」と釣友から勇気をもらいこの日の釣りを終えたのでした。
大地冷やす通り雨
翌日は本流をメインに釣り歩きました。
雨の翌日で水が退き濁りの取れかけた朝マズメ。
大鱒の出る条件が揃っていました。
相棒をいつもより早く起こし、散歩を済ませて誰も居ない河原に降り立ちました。
しかし、期待とは裏腹に一度だけ良い型のヤマメがチェイスしただけに終わりました。
その後は細かくポイント移動を繰り返しますが、両岸を覆う様に生い茂ったボサに苦戦して中々スムーズに釣り歩く事が出来ませんでした。
そうこうしている内に、時刻はもう10時過ぎと成り夏らしいジリジリとした陽射しが降り注いでいました。
こうなると反応するのはカワムツとアブラハヤのみで、朝抱いていた期待は不安へと変っていったのでした。
ここで真っ黒な雲が山に掛かっているのに気が付きます。
「あぁ、やばそうだな。」
退渓場所を探している内にザーザーと降り始めました。
ぶ厚い雲が一気に光量を下げ、大きな音で木の葉にバチバチと当たる雨音は恐怖さえ感じさせます。
びしょ濡れには成りましたが無事に車に戻ると、眠気に襲われました。
今朝、無駄に早起きしたのが原因でしょう。
座席に座ったまま眠りに就いていると、ザラザラしたモノが僕の顔にまとわり付く感触で目が覚めました。
相棒の「ノドカワイタ」の合図です。
時計に目をやると15分程眠りに落ちていた様です。
空を見ると既に雨は上がり青空が広がっていました。
何でもない日を特別に変えるイワナ達
仮眠を取った事でようやく頭もスッキリしました。
しかし、朝の様に燃え上がるような釣り欲は有りません。
車の窓を全開で、川沿いの道をのんびりとドライブします。
程良い駐車スペースに入り、釣りを再開させました。
雨上がりの、本流を引き抜ける風は心地良く、強めの陽射しが冷えた体には暖かく感じました。
バイカモが密集する流れは、渓流釣りのイメージと少し違いましたが、ちゃんとイワナが出てきてくれました。
不思議な事に気持ちに余裕が有る時ほど、魚も反応を示すものです。
この季節には外せない、オーバーハングした木が在るポイントにやってきました。
クロスの立ち位置を取り、かなり上流側からミノーをドリフトさせ日陰に送り込むと深めのレンジでそいつは現れました。
大物と対峙した時、釣り人は時間の流れが変わった感覚に陥る事があります。
保護色でカモフラージュされた筈の魚でさえ目で捉える事が出来て、周囲の音が聞こえなく成り、視界は一点にロックされた様な…。
この時も説明できない不思議な感覚に包まれたのを覚えています。
そして、大きな魚影はそのままミノーを咥え込んだのです。
最初は、流れに定位したまま口に掛かったルアーを嫌がる様にブンブンと大きく体をくねらせていました。
その後、急にスイッチが入った様に走り出したのです。
ラインが枝に掛からない様にロッドを操作し、障害物から離したところでネットを構えますが、この最後の段階が一番苦労しました。
そして、ようやくネットの径を大きくはみ出したイワナが浅瀬に横たわったのです。
一連のやりとりが終わると川の音や虫の声が再び聞こえてきて、青く澄んだ空に白い雲が眩しく映りました。
この一尾で充分に満たされた筈だったのですが、退渓場所はもう少し先に在ります。
折角なので釣りをしながら退渓点を目指します。
そして、先程とは打って変わって、急流と呼べる瀬が現れました。
通常、渓流域では50mm台のミノーを使いますが、この流れでは歯が立たないので、7cmクラスのミノーに頼る事としました。
ドリフトでブッツケと成っているブロック際まで流すと、又しても良型のイワナが喰い付いたのです。
先程特大サイズとやり合っていることもあって、落ち着いて取り込む事が出来ました。
体側に虹を掛けた様な鮮やかなイワナでありました。
幅広ヤマメ
もう今日は大満足。温泉にでも浸かりに行こう!
と、言いたいところだったのですが、今回の釣行はどうしてもこの川のヤマメに逢いたいという想いがありました。
昨年、良型を捕り逃している事もあるのですが、其れとは別にどの個体も体高があり目付きが鋭い格好良いヤマメが多い様に思うからです。
果たして夕マズメを迎え、瀬の続くポイントへと移動してきました。
ここでも、石裏や流れの筋といった渓流らしいポイントを撃つのではなく、まるでバスやナマズを狙う様にボサ際にルアーを落とし狙って行きました。
すると、銀色に鋭く光る魚影が見えたかと思うとそのままルアーを引っ手繰りローリングを見せました。
目的のヤマメと確信して思わず嬉しく成りました。
数尾のヤマメを釣る事が出来ましたが、どれも体高が高く男前な表情をしているのが印象的でした。
これがこの川の個性だとするならばずっと受け継いでもらいたいと思うのです。
温泉にも浸かり、ソフトクリームでクールダウンしてから帰路に就きました。
パーフェクトな休日を過ごせたのは、出掛け前に爪を切ったお陰だろうか?
次回の釣行を想う余り、爪を切り過ぎて指先がヒリヒリと痛む今日この頃であります。
タックル
ロッド:ジャクソン カワセミラプソディー 532UL
リール:シマノ ヴァンキッシュ C2000HGS
ライン:YGKよつあみ UpgradePE X-4 0.4号
リーダー:ナイロン 5lb.
ルアー:ジャクソン アーティスト FR55・FR70 トラウトチューン ノーマルシンキング・フローティング
撮影機材
カメラ:Nikon D5200
レンズ:SIGMA macro 18-300
ロケーション
長野県 千曲川水系