- 2020-3-31
- 渓流と湖の釣り/IN THE FIELD
- 渓流, 木下進二朗, アマゴ
ペダルを漕ぐと釣りは楽しい
ウェーダーの前に
新調したのは何年振りだろう?
学生時代に、並木敏成プロのエビスに憧れてノーブランドのジーパンにペンキで細工したのが懐かしい。
ダイエットを兼ねた片道一時間の自転車通勤を始めて6ヵ月が経った。
服選びが難しく、冬でも防寒パンツやダウンジャケットでは15分も漕がない内に汗だくに成ってしまう。
そんな事情も有って、気に成っていた新製品のリールを犠牲にしてまでもジーパンを買った次第だ。
釣りに出掛ける時は、直ぐにウェーダーを履ける様スウェットやジャージで出掛ける事が殆どだったけれど、今シーズンはちょっと面倒でも現地で履き替える事にしよう。
勿論、今も横を通り過ぎていく車にそわそわしながら、ジーパンを脱ぎインナーに履き替えて、更にウェーダーを履いた。
これまでと違いこのひと手間はちと面倒だ。
まぁ、言っても3月の早朝。
支度を済ませ渓に降りる頃タイミング良く陽が差し始めた。
何だか良い一日に成りそうな気がする。
“不要不急の外出を控える要請”もここでは意味を成さない気がした。
岩のヨレにて
透明度の高い流れに時折小さな魚影が走るのが見えたけれど、反応は良くない。
このところ寒暖の差が激しいのが原因だろうか?
運悪く三寒四温の”寒”を引いてしまった様だ。
ただ、不思議と釣れない事への焦りは無かった。
山桜や山菜も顔を覗かせ日常とは隔離された空間を独り占め。
これこそ渓流釣りの醍醐味に違いない。
釣り上がりながら、「あっ」とか「おっ」とか言いながら魚との駆け引きに苦戦していた。
岩が二つ並んで流れを絞り良さげなヨレが出来ている。
上流から沈めながら、タンタンとトゥッチを掛けるとルアーの腹をバックリ咥える一尾の魚影。
浅瀬へ寝かせ構図を練る。
最近ではケータイのカメラも秀逸でSNSには綺麗な画像が溢れている。
僕が渓魚を撮るとき、意識するのは生命感。
この冷たく澄んだ流れに体力を削られながらも必死に生きる様を残したかった。
この後も逞しく生きて欲しいと、岩の下に消えていくのを見届けた。
強めのコシに食べ応え
たった一尾されど一尾。
きっと出会いたくもなかったであろう僕と遊んでくれた事に感謝しよう。
次に退渓出来そうな場所があったら上がろうと決めて、結局昼近くまで釣りをしていた。
橋の袂から土手をよじ登り畑の細道を抜けた。
すると古風な家屋に木彫りの看板が掛けられていた。
「田舎そば」とある。
生垣を覗くと、何処からか「こんにちは」と聞こえた。
とっさに「こんにちはっ」と返したけれど、勝手に覗いていた後ろめいた思いからその場を後にした。
車に戻り、用意して来たレトルトカレーを食べようと鍋に手を掛けたけれど、先ほどの田舎そばが無性に気に成る。
いつもなら”また今度”と成っていただろう。
ジャージに釣り用ジャケットでお店に入るのは流石に抵抗がある。
しかし、今日はジーパンという強い味方がいる。
コーディネイトはタンクトップからダウンジャケットまで取りあえず様に成ってしまう、魔法のズボン。
という事で再びジーパンに履き替えて、釣りでも着ていたワークマンのジャケットを羽織れば恥ずかしくない格好に仕上がった。
玄関をくぐると、昭和レトロな良い感じの雰囲気に包まれながら文字通りの田舎そばと山菜の天ぷらを頂いた。
至福の時とはこう云う事をいうんだろうか。
お勘定を済ませ「ご馳走様」と店を出た。
桃の花が咲く庭を、相棒と散歩して川を覗く。
アマゴがライズしていた。
釣りだけ見たらすごく厳しい一日だったのに、何故だか充実した日に成ったのはペダルを漕ぐ為に新調したジーパンのお陰だろうか?
タックル
ロッド:ジャクソン トラウトアンリミテッド532UL
リール:シマノ ステラ C2000SHG
ライン:YGKよつあみ UpgradePE X-4 0.4号
リーダー:ナイロン 5lb.
ルアー:ジャクソン メテオーラ52 / 奏40 / 奏45 / アーティストFR55
撮影機器
カメラ:Nikon D5600
レンズ:SIGMA 18-300㎜ 1 : 3.5-6.3 DC φ72
ロケーション
静岡県 天竜川支流