~ングに良い思い出は無かった。
まずエギング。伊豆の海でそこいらじゅうに漂いまくっているアオリイカ全てにガン無視されて以来やっていない。
そしてチニング。狙っている時以外にしかチヌが釣れず、自然消滅的にやらなくなった。
そしてメバリング。これも港の灯火の下に黒々と塊でいる魚群が、私のワームを避ける為に一斉に道を開けるのを見て以来やっていない。
そう…ブッチャケて言うと…
(´・ω・`)釣れないんですよ、本当に。
それ以来、~ングは絶対にやらないと心に決めていました。しかし、今、世は正に~ング全盛時代。釣具屋に行けば必ずエギング、アジング、等のング用品が目につき、それは恐るべき勢いで釣具店の棚を侵食し、私の大切な手作りルアーの材料関連を駆逐しつつある。
ヽ(*`Д´)ノ禁止!ング禁止!
ング包囲網が着々と狭まりつつある今、冬の海で私を慰めてくれるのはカサゴちゃんだけである。カサゴは多少釣れなくなっても、地道に岩穴を訪ね歩けばきっと釣れてくれる。
ハゼングなど、次々と現れる新たなングの包囲網にも健気に対抗している。その証拠にカサゴングだけは聞いた事が無い。
12月初旬、釣具屋の棚で抵抗を続けているカサゴ用ワームとジグヘッドを素早く手に取り、
~ング師達の目に付かないように素早くレジへ運ぶ。
油断大敵である。映像端末が発達した今、~ング勢力に逆らう行為を記録されれば、異端者としてSNS上で吊し上げに会う可能性すら考えられる。
通りを睥睨する釣具店の看板を後にし、午後の日差しでレモン色に染まる天草五橋を渡り、海鳥達がねぐらへ急ぐ頃、目的地の天草西海岸の鬼池港に着いた。
この鬼池港、天草西海岸では最も有名な釣り場の一つで、当日は、サビキ釣りで小アジがよく釣れていた。
私も早速ジグヘッドリグを岸壁沿いに落とし込む。案ずることは無い。地道にリグを落とし続けていれば、カサゴちゃんはきっと答えてくれるのだ。
釣り始めて2時間、全くアタリは無い。この時期、どこにでも居る見えメバルの姿もない。気付くと、やや距離を開けてエギンガ―が二人、私を挟むようにして竿をしゃくりはじめた。
( ゜д ゜)来た…来やがった!エギンガ―の包囲網か?!
やがて一人のエギンガ―がコウイカを抜き上げ、写真に撮る。
(`・ω・´)イイナー、エギング釣れてるのかー…
よく見れば、堤防上にはイカ墨の跡が点々と付いている。「俺もそろそろングを…」心が折れかけるが、ここで釣りの暗黒面と言っても過言ではない「~ング」に堕ちてしまったら、師匠であるジェダイマスター壷内M氏に顔向けできない。(師匠はヘラ師だったけど)
「イカ…要ります?」
不意にエギンガ―に声を掛けられた。
(゚∀゚)マヂっすか?
何も釣らぬうちに棚ぼた的コウイカget!(ここでングに対する好感度が微妙に上がる)
水平線が桃色に染まり、フェリーの汽笛が暮れ行く空を震わせる頃、あまりの釣れなさにサイズダウンを繰り返したリグは、小型化の極致へと到達し、遂に「アジ弾丸」なる1gのヘッドと、「アジアダー」 なるチリメンジャコみたいに細いワームになっていた。
竿はシマノ ゲームType RF S76FF 食い渋りでバラシを多発する夏の本流山女魚用に入手した竿である。
リールはシマノカーディフ、 これも渓流用に入手したものである。
ラインはシマノ ソアレアジング3lb トラウト用ナイロンのあまりの寿命の短さに嫌気がさして入手したもの。
ルアーは前記のアジング用、根魚が極端に食い渋った時の為に入手した。
…アジング用に買ったものが何一つ無いにも関わらず、完全なアジングタックルを手にしていた。しかも、鬼池港と言えば、アジングのポイントとしてもテッパン中のテッパン。これでアジ釣りに来たんじゃなきゃ、ただの不審者である。
Σ(゚Д゚,,)遂に…俺も…~ングをすることになっちまったのか…
小アジは防波堤の角にある常夜灯の下で相変わらず釣れていた。竿が立つ度に、キラキラと輝くアジが鈴生りであがる。
その潮下でジグヘッドリグを投げてみる。飛距離は出ない。風の弱い日だったが、10mチョイ、なんとか飛ばせるぐらい。そして、1gのヘッドでは底取りもまず不可能であろう。潮流に任せてちょっと流してみる。
アタリはすぐに来た。出過ぎた糸ふけを回収するつもりでリールを巻くと、「クククッ」と微かなアタリ。何度か空振りをした後、10cmほどのコアジが釣れる。
どうやら、釣り方はこれでいいらしい。今度は投げた後に糸を出しながら流してもみる。こうした方が沈みが良いようで、アタリは更に多くなった。
この日は渓流魚籠に小アジをいっぱいに釣ることが出来、恵比須顔で釣り場を後にした。釣れると分かれば現金なもので、俄然やる気が出てくる。
後日、今度は敢えてデイゲームに挑戦してみる。前回は常夜灯、サビキ釣りのコマセ、コマセが効いている潮下、と奇跡の三条件が揃ったが、いつもそう上手くいくわけではない。それらが無い場所で釣れれば、「アジングは釣れる」と言えるのではなかろうか。
午前9時、前回釣った場所は、当日かなり強い風に吹かれていたせいか誰も来ていなかった。寒風に耐えながら竿を振り、リグを潮目に流すがヒットは無い。
潮は大潮、午前10時に潮が流れ始めたので、ジグヘッドを1.8gに替える。その頃からサビキ釣りの人達が次々にやってきて、仕掛けを下し始めた。地元の人達は良く知っている、下げに変わった直後が時合のようだ。
相変わらずサビキは釣れるが、私の方には来ない。しかも、今回は一番潮上に陣取ったので、コマセは全く効かない。こりゃ、ボウズか?…
しかし、海面をよーく見てみると、防波堤の角から伸びる潮目に、明瞭な反転流が有った。コマセは全て魚に食われるわけではない、残りはこの反転流の中で渦を巻いている筈だ。糸を出しながら、その中にリグを流し込むと…
「クククッ!」ついに来たー!
思いがけず強い引きにドラグが鳴る、尺アジかもしれないので慎重に引き寄せたが、正体はサバ。これはこれで結構嬉しい。
その場所でアジサバ混ざりながら15匹ほど釣り上げ、今度は、サビキ釣りの人が居ない場所に挑戦するため移動。鬼池からさらに半島の先端を目指してゆくと、車道からも見えるほど強い潮目が伸びる防波堤を見付けた。
ここでも釣れれば、間違いない。早速潮上に陣取り、1.8gのリグを流す。
三投目ぐらいだろうか、潮に引かれて出ていく糸が反転流に入り、フワリとふけた時、ラインが走り、あのアタリが来た。
確かに釣れる、再現性もある。同じ手法で地合いが過ぎるまでに10匹ほど追加できた。
聞けばこのアジング、天草なら、季節によって場所は変わるが、何だかんだで一年中狙えるという。サビキで狙うのも良いが、こうやってわざわざ手間をかけて釣るのも面白い。ドジョウ付ければ放っておいても釣れるブラックバスを、わざわざルアーで狙うのと同じ感覚だ。