シンキングペンシル。ルアービルダーにとってこれほどの天敵は居ない。
何故なら、構想三年、試作二年、フィールドテスト10年の、ビルダー人生賭けて作った珠玉の傑作シンキングミノーよりも、初心者が思い付きで作った、しかも、泳がないシンキングミノーのリップを、気まぐれに抜いてみただけの奴の方が釣れる事しばしばだからである。
例えば、私が試作シンキングミノーの自慢話をしようと思って
(*´д`*)
こないださあ、白川で60upのシーバス釣っちゃったんだよ、この自作シンキングミノーで。
等と発言しようものなら、横で聞いていた初心者ビルダーがひょっこりと現れ
(`・ω・´)
その時、対岸で80up三本ランディングしていたのが僕です!自作シンキングペンシルで!
などと、完全に話を持って行かれてしまった挙句、それを境に明るい時間、その界隈を出歩けなくなるリスクが伴う、正にルアービルダー殺しの天敵なのである。
ヽ(*`Д´)ノ
憎いぞ!なぜあんな泳がないルアーが釣れるんだ!
しかし、ものは考えようである。斯様なシンペン(シンキングペンシルの略語)テロを未然に防ぐ手段さえ持っていれば慌てずに済むのである。
〈泳がないのに釣れる〉 というのは、釣れるルアーと釣れないルアーの差があまり無く、言ってみれば使い手の腕一つで駄目にも傑作にも成り得るわけで、仮に本当に駄目なルアーを出しても、殆どの人は自分の腕が悪いせいだと思う筈である。
例えばルアー制作初心者が
(`・ω・´)
自作シンペンで数釣りしたよ!
等とシンペンテロに及んだ場合、カウンターテロ用に事前に用意しておいた捨てシンペンをその初心者に渡し
(;´Д`)
これ、その日、別のポイントで80up入れ食いしたシンペン(嘘)。
後学の為、君にあげるから、これを研究して精進したまえ
などと、やり返し、話をすり替えることが出来るわけである。
で、試作したのがこれ(上)。同じ写真にあるシンキングミノーのリップを付けなかっただけの物である。
ボディー形状の為か、巻き始めるとすぐに浮き上がり、レンジキープ能力は無い。
しかし、これでいいのである。私のビルダー人生を嘘の力で守ってくれればそれだけで十分だ。
で、このテキトーに生まれたシンキングペンシル(笑)。どんな動きをするのかと試しに引いてみると、リップレスであるにも拘らず、結構ローリング系の動きをする。
しかもこれ、水面まで上がって来ると、V字状の引き波を立て、それはボラの幼魚がライズする時のあの引き波にそっくりである。
なんだかいけそうな気がしてきた。
これを最初に試したのは秋の白川。ハイシーズン中で魚は多いけど人も多く、結構スレている状態。
先行者が入念にミノーで打ち、しかも何本かキャッチした後に入ったポイントで、このシンキングペンシル(笑)は小さいながらも一投目からシーバスを引っ張り出してきた。
( ^ω^)
やりました!私の戦略通りです!(嘘)
( ^ω^)
素材である木と語らい、河の水音から自然の心根を聴き出す…(適当)
( ^ω^)
ま、本当に釣れるルアーっていうのは、そういう繊細なセンスを日々磨いている人じゃないと作れないものなんじゃないかな(笑)と思いますよ僕は(大嘘)
と云うような、壮大な法螺を、並み居る文人墨客達の前で披露できる可能性すら、出来たわけである(遠い目)
嘘から生まれた誠シンキングペンシル。こんなに簡単にできるものなら、これの進化型もさぞかし簡単にできるんだろうと思って着手したら大苦戦。
人間視点から見れば、単なる動かない出来損ないのミノー に過ぎない物だけど、魚はそのルアーのシルエット、発する波や光の反射なんかを見て、食いつくかスルーするかをかなりシビアに選択している模様。
これもまたビルダー殺しです。
ミノーだったらロッドティップに伝わる振動を通して、今、その水深、その水流でルアーがどっちを向いていて、どんな動きをしているのかの見当もつきますが、引き抵抗の殆ど無いシンキングペンシルでは、それらの情報は殆ど想像に頼るしかない。
魚がヒットした時の状態が分からなければ、次の試作に必要な情報も得られない訳で、つまり本当に釣れるシンキングペンシルを作ろうと思ったら、嘘じゃなく素材と語らい、河の水音から自然の心根を聴き出すセンスが必要となるわけで、今の私には本当のところ、そのセンスは…?
( ^ω^)全く無ぇので御座います(逆切れ)
適当に法螺を吹くつもりで作り始めたシンキングペンシル。以後、マグレで生まれたとは思えない快進撃を続け、宮崎でマゴチをヒットさせたり、ミノーで無反応だったサラシの中からヒラスズキを引っ張り出してきたりと大活躍。
じゃ、ミノーは絶対にシンキングペンシルには勝てないの?と言われればそんな事は全然なく、魚が居るスポットが明確な場合以外では、大体ミノーの方がアタリは多い。
つまり、魚を寄せるほどの力はシンキングペンシルには無く、サーチベイトとしての能力には欠けるという事になる。しかし、この押しの弱さがメリットになる場面もある。
もうすぐ時合の筈で、魚が食ってくる場所もピンポイントで分かっているんだけど、スレるのが嫌だから、うかつに手を出せない。こんな状況なら迷わずシンキングペンシルで行くべきだろう。
今回マグレで出来た水面直下専用以外にも、ディープレンジまで届く物も作れるかもしれない。これから暫くの間、試行錯誤の試作は続くだろうけど、果たして 繊細なセンスの方は身に付くのか?
もしかしたら、素材の木や河の流れを眺めながらブツブツ独り言を言う、所謂「危ない人」になってしまうリスクも有る。色々な意味で綱渡りの試作になると思われますが、もう少し頑張ってみます。