週末ですが大雨ですね。通常の雨であれば、良い感じの濁りも入り活性も上がるところですが、洪水注意法がでるような雨の場合は、安全のためにも無理な釣行はやめましょう。 釣りにいけない日には、読書でも。
- 「魚道」(さかなどう)
- 著者:水谷修、鈴木一人
- 出版社:海竜社
- 2013年3月発行
TVにも良く出ていた「夜回り先生」こと水谷修氏と、ライブフィッシュに拘る葉山の寿司の名店「稲穂」の寿司職人・鈴木一人氏の共著。 自称、日本一寿司を愛する寿司ファンと、日本一魚を愛する寿司屋のオヤジが、それぞれの立場から、江戸前寿司の置かれた厳しい状況を憂い、寿司と魚への愛を語っています。
例えば、春の代名詞「桜鯛」。 真鯛は、3月から6月にかけて産卵のため接岸します。この時期の鯛を「桜鯛」と呼び、珍重してきました。ところが、産卵時期の鯛ですから、メスが産卵にエネルギーを使うため、食べても身はおいしくないのだそうです。
春先のバチパターンで、比較的簡単に釣れるシーバス(産卵して湾奥に戻ってきたシーバス)も、明らかに痩せていますものね。
では、なぜ「桜鯛」と素敵な呼称がついて、風物詩となっていたのでしょうか。 かつては、今ほど漁の技術が発達していませんでしたから、魚が接岸し捕獲が容易となる時期が、そのままその魚の旬として商いされていたというわけです。美しい名前の陰で、人の営みの事情があったわけです。
四季に富み、海に囲まれた日本列島に暮らす私たちの祖先は、太古より季節折々の海の幸の恩恵を享受してきました。しかし、環境汚染や世界的な水産物への需要の高まりにより、海の幸は厳しい状況におかれています。 もともとは江戸庶民のファーストフードとして生まれた江戸前寿司も、寿司ネタである魚の高騰を受け、旬の天然ものだけでは商売が成立しない状況にあります。
「桜鯛」のような事例を豊富に扱いながら、海の季節変化の中で暮らす魚と寿司に纏わるお話が軽妙に綴られています。
釣りを楽しむアングラーも、大げさに言えば魚と命のやりとりをしています。釣りを楽しみ、自然に思いを馳せ、魚に感謝する。各々の釣りの楽しみ方はあって良いわけですが、たまには立ち止まって、魚のおかれている状況について考えてみたいものです。
江戸前寿司を通して、自然の恵みを頂くことについて、考えさせる一冊です。 ご一読あれ。
※鈴木一人氏の寿司屋
- 店名:葉山「稲穂」
- 住所:神奈川県三浦郡葉山町堀内625-12
- 電話:046-875-7803